合繊メーカーの自動車関連M&A/ポジションが変わる/素材供給からティア2に

 合繊メーカーが自動車関連で積極的なM&A(企業の合併・買収)に動いた。成長分野として期待が大きい自動車関連用途での事業拡大が狙いだが、電気自動車(EV)シフトなど自動車産業の構造変化を見据えた動きでもあり、合繊メーカーが自動車製造サプライチェーンで従来の素材供給からティア2(2次請け)へとポジションを変えることも狙いと言える。

 旭化成はこのほど米国の自動車内装材大手であるセージ・オートモーティブ・インテリアズの買収を決めた。取得価額は約791億円に上る大型M&Aとなる。セージ社は旭化成の人工皮革「ラムース」を染色加工し、「ディナミカ」ブランドでカーシート地を販売する伊MIKOも傘下に持つ(旭化成も一部出資)。さらにセージ社は先ごろ、倉庫精練からメキシコのカーシート材製造販売会社、倉庫精練メキシカーナを買収することも発表した。そのセージ社を傘下に加えることで旭化成は自動車内装の材料から製品供給までの一貫体制を確立することになる。

 帝人フロンティアもこのほど、ドイツの自動車向け吸音材・シート用ワディング材メーカーであるJ.H.ジーグラーの全株式を取得し、完全子会社化すると発表した。買収金額は約162億円。今回の買収を契機に吸音材やシート部材関連で原綿・原糸からの一貫での開発・生産する体制の構築を目指す。

 これらM&Aに共通しているのが、セージ社もジーグラー社もともに自動車産業サプライチェーンのティア2に位置する企業であることだろう。M&Aによって旭化成と帝人フロンティアはともに素材サプライヤーからティア2にポジションを変わる。ティア2になることで素材サプライヤーの立場では難しかった自動車メーカーとの直接的なパイプ構築や開発提案が可能になる。このため自動車関連用途でのシナジーへの期待は極めて大きい。

 さらに注目すべきは、EVシフトや通信デバイス化(コネクテッドカーの普及など)による自動車産業の構造変化を見据えた動きの可能性だ。自動車は各部品を最終組み立てする際にすり合わせ技術の重要性が高く、最終組み立てを担う自動車メーカーがサプライチェーンでの主導権を握ってきた。しかし、EV化や通信デバイス化によって自動車技術のモジュール化が進めば、サプライチェーンでの主導権が自工メーカーからティア1やティア2の部品メーカーに移る可能性がある。情報通信・ハイテク関連の巨大企業がティア1やティア2を水平分業させることでEVやコネクテッドカーに新規参入する可能性もゼロではない。

 こうした自動車産業の構造変化によってサプライチェーンでの収益の中心が川下の自工メーカーではなく、川中のティア1やティア2に移行する可能性すらある。こうしたことを考慮すると、日本の合繊メーカーがティア2など自動車産業サプライチェーンでの川中企業をグループに加えることは極めて大きな意味を持ちそうだ。