カネカ/海水中生分解性合繊を開発/ESGのソリューション提供

 カネカの田中稔副社長らはこのほど大阪で会見し、事業戦略の基本に「ESG(環境、社会、ガバナンス)」を置くことを強調した。その一環として、同社が開発した海水中でも生分解性を持つポリエステル系ポリマー「カネカ生分解性ポリマーPHBH」の実用化を加速させる。樹脂・フィルムだけでなく繊維での開発にも取り組んでいることを明らかにした。

 同社は2018年4月に「ESG憲章」を制定し、従来のCSR基本方針に代わる指針とした。17年に事業組織を従来の素材・商品ごとの区分から、顧客に提供するソリューションごとのユニットに再編したことも合わせて、ESG経営でも事業部の壁を取り払う。

 地球環境と生活の革新に貢献する「アーソロジー・ケミカル」と、健康で活力ある人生のためのソリューションを提供する「アクティブ・ヒューマン・ライフ」の二つのソリューション提供に取り組む。田中副社長は「現在、人類は環境・エネルギー、食糧、健康という三つの問題を抱えている。これを解決する価値あるソリューションをグローバルに提供する」と話す。

 その一環として、カネカ生分解性ポリマーPHBHの実用化に取り組む。カネカ生分解性ポリマーPHBHは天然の植物油と微生物を原料とする。コンポストや土壌中だけでなく海水中でも生分解性を確認しており、欧州での認証も取得した。

 近年、マイクロプラスチックによる海洋汚染が世界的な問題となる中、カネカ生分解性ポリマーPHBHへの注目度は高く、欧州を中心に多くの引き合いが寄せられた。このため現在は年産千トンの生産能力も19年12月には同5千トンに増強する。さらに同2万トン規模の量産プラント新設への検討も進めている。

 まずは果物・野菜袋やストロー、プラスチック製食器など樹脂・フィルムとして実用化を先行させているが、繊維としての開発も進めている。紡糸には既に成功しており、今後は実用化に向けた物性確立に取り組む。ファーなど衣料用途のほか、漁網など水産資材などがターゲットとなる。さらに、短繊維で不織布原綿としての実用化も視野に入れている。グループ外の繊維企業に原料として供給することも検討する。

 生分解性バイオポリマーによるプラスチック資源循環システムの構築に向けて炭素循環サイクルをプラスチック資源循環戦略に位置付けることを目指す。産学官連携で利用・回収インフラの構築や環境負荷低減効果の実証研究、生分解性の評価技術やラベリング制度の開発・導入と国際標準化などにも積極的に参加する。