特別インタビュー 東レ 日覺 昭廣 社長(前)

ネガティブ要素は少ない/最大の問題はマネーゲーム

 米中の通商問題や原燃料価格の動向といった火種がくすぶる2019年の世界経済。日本の繊維企業も濃い霧の中で難しいかじ取りを強いられることになるが、東レの日覺昭廣社長は「景気は緩やかな回復基調が継続する」と予想し、ネガティブな要素は少ないと前向きだ。国内外の経済情勢や同社の事業戦略などについて話を聞いた。

――19年はどのような年になるとみていますか。

昨年は緩やかな回復基調が続き、19年もその流れに大きな変化はないと考えています。

米中の通商問題が指摘されますが、互いに落としどころは知っているのではないでしょうか。特に米国は、現在の世界経済体制を作ったと言え、経済悪化で最も損を受けるのは自分たちであることを承知しています。

日本では消費税増税が控えていますが、消費者は「無駄な税金を払わされているのではないか」という不信感を持っています。これを払拭(ふっしょく)するためにも、政府は還元セールだけでなく、「増税分は福祉などに使っている」と明確に示さなければなりません。そうすれば買い控えなどの流れは変えられると思います。

――ネガティブな要素はあまりないとの考えですか。

最大の問題は金が余っていることです。いつからか、景気浮揚策として紙幣を大量に刷って供給量を増やすという手法が取られるようになりました。金融緩和を含め、こうした策はバブル経済を招く恐れがあり、どこかで歯止めをかけなければ大変なことになります。原料価格や株式価格、為替も問題の根っこは同じところにあります。

――ただ、現実的には原料価格高は東レの収益にも影響を与えています。

マネーゲームがトリガーの原料価格高ですが、それが実体経済にも影響を及ぼしているのは確かです。東レでは特に炭素繊維複合材料事業の18年度上半期(4~9月)が、原料価格の急激な変化に直面したことで減益を余儀なくされました。価格転嫁は樹脂やケミカルなど加工度が低い分野で比較的早く受け入れられ、次に加工度の高い分野という順番になります。

上半期に原料価格高騰のあおりを受けた炭素繊維ですが、値上げが認められつつあります。時間はかかっていますが、価格改定の進展によって収益は改善できます。もちろん、付加価値品への置き換えなど、差別化のための自助努力を続けることが大前提の話です。

――19年度は中期経営課題“プロジェクトAP―G2019”の仕上げの年です。

これまで取り組んできた路線から大きな変更はありません。例えば繊維事業ではスパンボンド不織布やエアバッグ関連の拡大、糸わた・テキスタイル・製品一貫型ビジネスのさらなる成長に取り組み、樹脂では自動車部品を攻めます。リチウムイオン電池用のセパレーターも投資を行っています。

電気自動車(EV)用の電池の需要は伸長するでしょうが、世の中で言われるほどEV自体が伸びるとは考えていません。将来的にはやはり燃料電池自動車(FCV)が主流になり、そのインフラの拡充などで何かしらの好機があるのではないかと推測しています。

広告