紡糸ノズル製造/日本メーカーにMB用注文殺到/マスク増産のカギ握る

化繊ノズル製作所は昨年夏に紡糸ノズルの新工場を稼働した

 世界最大のマスク生産国である中国で新規参入を含めて能力増強が進むが、世界的な品不足が続く。フィルター機能の鍵を握るメルトブロー不織布(MB)の不足が一因。MBも能力増強が進めむが、生産設備の核部品であるノズルは中国製が使えないため、日本の紡糸ノズル製造の受注が急拡大している。

 紡糸ノズル製造大手の化繊ノズル製作所(大阪市北区)は、2月から中国や日本など世界各地からMB用ノズル・ダイの注文が急拡大している。春節後の1カ月半だけで通常の2年分に相当する量を受注した。新規参入も多いため、「MBを生産するにはどうすればよいか」という問い合わせも多いという。

 同社の東江原工場(岡山県井原市)は昨夏に新ノズル棟を完成させて体制を整えたが、それでも足元は納期15カ月と生産に追われている。需要拡大に対応するため生産能力増強も検討する。新型コロナウイルスが収束しても、MB用はフィルター製品などの市場が拡大するとみられることも背景にある。

 日本ノズル(神戸市西区)もMB用ノズル・ダイの注文が3月から増えた。受注は通常月の5倍以上で、この1カ月はMB用で約8カ月分を受注した。

 同社はスパンレース不織布(SL)用が主力のため、MB専用の生産ラインは限られていたが、溶融紡糸用のラインをMB用にして対応する。SL用も堅調な中でMB用の需要が増えたため、少なくとも年内はタイトな状況が続く。協力工場の設備も活用し、技術者を派遣して需要拡大への対応を急ぐ。今期はMB生産設備も販売できる見通しで、国内外で商談を進めている。

 中国は国を挙げてマスクの増産に動く。電気自動車のBYDや自動車メーカーの長安汽車、北京汽車、上海汽車など異業種も次々と参入し、能力を増強。「紡織服装週刊」によると、中国のマスク生産量は19年が日産約2200万枚で世界の55%を占めたが、2月末には1億枚を超えた。

 マスクの加工能力が増強される中で、MB不足が顕在化した。MBは大きな設備でも1台が年産800トンほどで、生産能力が小さい。新設備を導入するにも稼働までに時間がかかり、加工の増強にまだ追い付いていない。

 中国のMB生産量は18年で5・3万トンだったが、この工程も新型コロナの感染拡大以降、大増設に入った。MBメーカーは中小規模が多かったが、超大手企業も参入。例えば中国石化集団(シノペック)は傘下の燕山石化で4系列、義征化繊で12系列を新設し、5月の全面稼働後は年産1万トンを超えるという。現地紙の「証券時報」は、マスクなど呼吸防護関連企業は3月12日時点で3万8151社と2月から6千社以上増え、MBは347社で112社増えたと伝えている。

 樹脂を高圧で押し出し、熱風で飛ばして極細不織布とするMBの生産には高度な技術を要する。設備で特に重要な部品がノズル・ダイである。中国にMBメーカーはあるが、医療用マスクの規格(N95)を満たすためには、ノズル・ダイは海外製を使っているのが現状で、日本が高いシェアを持つとみられる。